【視覚編】五感をハックする世界のテクノロジー最前線
Oculus rift、VR、ヘッドマウントディスプレイ、裸眼立体視.......
これらのワードを一度は耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
頭につけるだけでバーチャルの世界に没入できたり、赤青フィルムのメガネをかけずとも画面からコンテンツが飛び出してくる。
理屈抜きに感覚が引き込まれてしまう、そんなテクノロジーをピックしていきます。
視覚
VR(バーチャルリアリティ,virtual reality) 「仮想現実」のことで、コンピュータなどによって作り出されたサイバースペースをあたかも現実のように体験する技術のこと。 CGや音響効果などを利用して、理工学的に作り出しユーザに提示する。
今回はみんなご存知 VR についてのtips書いていきます。
二年前、米Facebookが新興ベンチャーOculus riftを約2050億円で買収したのは記憶に新しい方もいるでしょう。
若干18歳の青年がカリフォルニアのロングビーチにある自宅ガレージで制作したヘッドセット。
Vuzixや任天堂といった大企業が早くに参戦していた分野で一青年がブレイクスルーを起こす。まさにドンキホーテ、アメリカンドリームですね。
Oculus Rift- Step Into the Game by Oculus # Kickstarter HD
ヘッドマウントディスプレイの簡単な原理を説明すると.......
人間の目は左右離れてついてます。つまり両目に対して左右ちょっとずつ違う画像を表示すれば現実の視覚情報を再現できるって算段です。
小さい頃、絵が3Dに見える下敷きとかカードとか見たことはありませんでしたか?
詳しくは書きませんがあれはレンチキュラーレンズというかまぼこ型のレンズが表面をびっしりと覆っていて左右の目にちょっと違うものを見せている仕組みです。
たったそれだけ?っていうシンプルなアイデアこそ強力なんですね。
次はあんまり知っている人がいないちょっとしたOculusの工夫を紹介します。
個人的に一番Oculus riftで感心したのはレンズの収差を画像側をいじることで相殺しているところです。
(この文章で理解できた人はもう読まないで大丈夫です)
説明します。
実際のヘッドマウントディスプレイはこんな構造になっています。
構造上、眼球の数センチ先にディスプレイがくるので通常ではよっぽど寄り目が得意な人じゃない限り視界のピントがあいませんよね。
そこでレンズの登場です。そしてこれが厄介な問題を起こしていました。
レンズにはザイデル5収差というものがあります。(詳細)
わかりやすいものでいくと球面収差。
中学時代、理科の時間にレンズの焦点を定規でビシッと引いたと思います。
でもそこに現実との相違があったんですね。
机上の理想化されたレンズならまだしも、現実のレンズでは周辺部を通った光と中心部を通った光で光軸上を通過する位置が少しずれます。
軸上を交差している箇所は俯瞰すれえば点でも現実世界では絶対に有限なんですよね。
「点ってめっちゃ拡大したら点じゃないやん。点ってなんなん。」みたいな哲学チックな問題です。
実際に私は高校一年生の時に廃材でプロジェクターを自作したのですがこの収差という現象で一ヶ月ほど頭を悩まされました。
(稼働中は爆熱排出&ブレーカー落としの達人)
どんなレンズを使っても投影画面が全体にピントがあってくれない。
中心にピントを合わせたら端がボケる、また逆も然り。
この収差問題、無視できそうで無視できないレベルの現象なんです。
で、例えば実際ディスプレイとレンズでどうなるかというと.......
(上図:5収差のうち樽型歪曲収差による)
この問題みなさんだったらどうしますか?
普通に考えれば
歪んでる→収差→レンズの問題→収差のないレンズ(高価)ってなりますよね。
でもここで彼らは一味違いました。
補正したレンズ高くね?→歪んでる分画像を歪ませたらよくね? ってなったんです。
今回は例として歪曲収差と球面収差を出しましたがまだあと三つも収差はあります。
物理的なレンズの視点から考えてたら果てしない道のりだったでしょう。
ちょっと視点を変えて問題を見たらスッと解決できたいい例ですね。
(実際にはoculus riftは色収差というものも画像側で補正をかけています。調べたら面白いかも)
今トレンドのテクノロジー、一見難解で理解できなくても細かく丁寧に見れば随所に工夫が見て取れます。
是非、これを機に何か問題にぶち当たった時ガラッと視点を変えてみてください!
(今回の記事にまつわるワードたちです。気になった人用リンク)
レンチキュラーレンズ パルマー・ラッキー フレネルレンズ フレームシンセンス
次回は”聴覚”をハックするテクノロジーについて書きます。では!